著者:パク・ジャソン(Jason Park)、オサン大学デジタルコンテンツデザイン学科専任講師
 

AI高速道路の成功は強力なGPUではなく、データ・モデル・コミュニティが透明に連携し継続的に好循環を生み出す運用体制、すなわち「うまく動かすこと」にかかっている。[Sources: https://aa-highway.com.sg/smarter-roads-ahead-how-ai-is-revolutionising-the-driving-experience/]
AI高速道路の成功は強力なGPUではなく、データ・モデル・コミュニティが透明に連携し継続的に好循環を生み出す運用体制、すなわち「うまく動かすこと」にかかっている。[Sources: https://aa-highway.com.sg/smarter-roads-ahead-how-ai-is-revolutionising-the-driving-experience/]

 

▶誰がこの道を運営するのか?

1970年7月、京釜高速道路が開通したとき、人々が注目したのはアスファルトの厚さではなかった。彼らが問うたのはたった一つだった。「この道は、本当に私たちを速く、安全に目的地まで連れて行ってくれるのか?」しかし、時間が経つにつれて、真の問いが明らかになった。「この道を管理し、発展させるのは誰なのか?」

50年が経った今、私たちはまた別の高速道路の前に立っている——AI高速道路。私がすでに寄稿した第①回で確認したように、AI時代の競争力はGPUの台数ではなく、インフラのスピードにかかっている。第②回では、その道路建設を阻む電力・冷却、ネットワーク・ストレージ、データ・人材という3つの壁を分析した。そして、残された最後の問いがある。

「すべての壁を越えて高速道路が完成したなら、誰が、どのように運営し、発展させるのか?」

京釜高速道路が真の国家の動脈となったのは、道路を舗装した瞬間ではなかった。交通管制センターが設置され、速度制限、車線変更の合図、事故対応プロトコルが機能し始めたときからである。管制センターのない高速道路は、ただただ最高速度で混乱へと突き進む無秩序な法外地に過ぎない。

AI高速道路も同じだ。世界最高のGPUクラスターを備えたとしても、学習されたモデルが現場で正しく動作しなかったり、ユーザーのフィードバックが再びデータとして吸収されなかったりすれば、そのインフラは停滞したままコストだけが蓄積される。AI時代の真の競争力は「作ること」ではなく、「動かすこと」にある。

▶管制センターの心臓部:AIガバナンスダッシュボード

交通システムが信号灯、速度制限、事故対応プロトコルなしでは機能できないように、AI高速道路にも明確な運用原則とリアルタイム監視体制が不可欠である。そのためには、まず構築すべきはAIガバナンスダッシュボードである。

このダッシュボードは単なる性能指標を超え、セキュリティ状態、モデルバージョン、データの出所、コスト構造、コミュニティの貢献度までを統合的に表示する。グローバルな先導企業はすでにこのことを理解している。OpenAIは内部のガバナンスダッシュボードでモデルのすべての変更を追跡し、Googleはクラウドプラットフォーム上でデータのラインエッジを自動的に記録している。彼らは「管理」ではなく、「エコシステム」を設計している。

しかし、私たちの現実は異なる。ある公的機関の事例がそれを示している。初期の学習は成功したが、実際のサービスでモデルが幻覚(hallucination)を起こした際、原因の追跡が不可能になった。データがどこから来たのか、どのような前処理が適用されたのか、記録がなかったからである。これは、信号灯のない高速道路で車を運転するのと同じだ。

◆運営の三本柱

第一、データラインエッジの追跡

すべてのデータとモデルは「バージョン」を持つべきである。ソフトウェア開発では、コードはGitで管理され、変更履歴は明確に記録される。しかし、多くの組織はいまだにAIモデルを「学習してデプロイすれば終わり」と考え、その後、同じ性能を再現することすら困難なケースが多々ある。

データラインエッジとは、すべてのデータセットの出所、変換履歴、使用記録をブロックチェーンのように不変で記録することである。これにより、あるモデルが急に異常な応答率を示した場合、そのモデルがどのデータセットで学習されたのか、最近変更されたパラメータは何かを即座に追跡できる。これは、高速道路に標識を設置するのと同じだ。

第二、モデルバージョン管理

AIはもはや「最新=最良」の領域ではない。タスクごとに適したモデルが別々に存在し、同じモデルであってもハイパーパラメータやチェックポイントによって異なる特性を示す。したがって、運営の単位は「一つの巨大モデル」ではなく、「異なるバージョンの複数のモデルの集まり」である。

管制センターは、各モデルについて責任者、学習データのラインエッジ、学習・推論コスト、デプロイ先と方法、失敗時のロールバック経路を同時に表示しなければならない。現場では、デプロイ直後に想定外の入力が押し寄せる。このとき、ラインエッジがなければ原因分析に数日かかり、バージョン管理がなければロールバックが不可能になる。

第三、RAGの最適化と幻覚制御

特にRAG(検索強化生成)は、今日の実務AIの核である。外部の知識をリアルタイムで参照して回答を生成する方式は柔軟性を提供するが、同時にエラーの拡散リスクも大きい。現在、多くの組織は巨大モデルの幻覚をモデルのせいにしている。しかし、実際に正確性を左右するのは、知識グラフ、インデックス戦略、チャンク単位、再ランキングポリシーである。

グローバル企業はRAGの幻覚率を1%未満に保ち、これを公開指標としている。これには、検証ループと自動ロールバックメカニズムが運用システムに内蔵されている必要がある。優れたRAGは「よく引っ張ってくる技術」ではなく、「よく質問して、よく選ぶ技術」の総和である。

▶透明性が生み出す好循環:オープンダッシュボード

運営の最終目標は閉鎖的な管理ではなく、開放的な好循環である。そのためには、オープンガバナンスダッシュボードが必要である。ダッシュボードは、リアルタイムのセキュリティ状態、モデルの状況、コストの推移、コミュニティの貢献度を透明に示す。

アメリカのHugging Faceはこのモデルを完成させた。数万のモデルが公開され、コミュニティが課題を提起して改善を促す。四半期ごとの貢献件数は数千件に達する。ある国内スタートアップも同様の経験をした。初期のモデルは内部でのみ使用されていたが、ダッシュボードを公開してフィードバックを受けたところ、再利用率が70%を超えた。中小企業が既存モデルを活用し、改良して再び共有する好循環が生まれ始めた。

モデルのデプロイ速度がどれほど速くなったか、どのデータセットが最も多く再利用されているか、誰がどのような形で貢献したかが透明に公開されれば、自然とより多くの人々がこのエコシステムに参画するようになる。これは単なる「協働」を超え、集団知性に基づく革新サイクルを生み出す。

▶測定可能な運営:新たなKPI

すべての運営は測定可能でなければならない。私たちは「GPUが何台」という古びた指標を捨てなければならない。代わりに、以下のKPIがAI高速道路の羅針盤となるべきである。

総所有コスト(TCO):単なる電気代ではなく、インフラ、データ準備、モデルの保守までを含む真のコストである。AI演算1回あたりの実際の電力と運用コストを把握しなければならない。

モデルデプロイ速度(Time-to-deploy):新しいモデルがアイデアから実際に現場にデプロイされるまでにかかる時間である。目標は2日ではなく、2時間である。ある大手企業のAIシステムは初期性能は優れていたが、デプロイ周期が長く、6か月で中止された。市場の変化に対応できなかったからである。

データとモデルの再利用率:70%以上を目標とする。これは単なる技術問題ではなく、標準化と信頼構築の問題である。国家レベルのAI高速道路であれば、ある部署が作ったモデルやデータセットが他の機関でも簡単に活用できるべきである。これにより、重複学習を減らし、TCOを削減できる。

コミュニティ貢献件数:四半期あたり100件以上を設定する。GitHubのイシューのように、誰でもバグを報告し、改善案を提案できるようにすべきである。イシューの報告、ドキュメントの修正、小さな性能改善の提案まで、すべてが高速道路の品質を高める資産となる。

RAG幻覚率:1%未満と厳格に管理する。この指標はスローガンではない。毎日ダッシュボードに表示され、目標を達成できなければ即座に対応すべきである。

これらのKPIは単なる数字ではない。組織の対話を変え、優先順位を再編し、最終的にはエコシステム全体の健康度を示すシグナルである。

▶コミュニティが生み出すエコシステム

そして、これらすべてを生き生きと動かすのはコミュニティである。AI高速道路は政府や大企業の独占物であってはならない。開発者、研究者、スタートアップ、さらには一般市民までもが、この道の上に貢献し、フィードバックを提供できるようにすべきである。

中国は国家AIプラットフォームですでにこれを実現している。数千の機関が同じデータレイクを共有し、モデルを公開してコミュニティが発展させている。私たちは、断片的な実証プロジェクトを越えて、一つの統合されたエコシステムへ進むべきである。

コミュニティのフィードバックループを通じて、ユーザーがそのまま運営者となる好循環構造を構築すべきである。高速道路の問題点を報告し、改善アイデアを提案する窓口を公式化すべきである。筆者の第②回の最後の問い、「誰がこの道を走るのか?」への答えは、「韓国のすべての挑戦者たち」であり、同時に、彼らがこの道の共同所有者であるべきだということである。

◆何をすべきか?

第一、国家AIガバナンスセンターを設立すべきである。データラインエッジ、モデルバージョン、RAGを標準化し、運営する。これは交通管制センターと同様の役割を果たし、全高速道路の流れをリアルタイムで把握・最適化する心臓部となるべきである。

第二、オープンダッシュボードの標準を策定すべきである。すべての参加機関が同じ指標を共有し、セキュリティに敏感な項目は匿名化するが、コスト・性能・品質・安全の核心的なシグナルは誰でも見られるようにすべきである。

第三、コミュニティインセンティブを導入すべきである。貢献件数に応じてリソース配分を優先し、優秀な貢献者にはインフラへのアクセス権を拡大することで、参加を促すべきである。

第四、KPIを法制化すべきである。再利用率70%、幻覚率1%未満、デプロイ速度48時間以内を義務化し、これらを満たすプロジェクトのみに政府支援を与えるべきである。

第五、教育プログラムを転換すべきである。AIモデルを作る「科学者」だけでなく、そのモデルを現場に投入し、効率的に管理する「オペレーター」と「ガバナンス専門家」を育成すべきである。

▶コストではなく投資

もちろん、このすべての運営体制は「コスト」を伴う。しかし、このコストは浪費ではなく、投資である。モデルのデプロイ周期を2日から2時間に短縮すれば、それだけ市場の変化に素早く対応でき、顧客の要求を反映できる。データの再利用率が高くなれば、学習にかかる電力と時間も削減される。

結局、AI高速道路の効率性は「どれだけ速く作れたか」ではなく、「どれだけうまく動いているか」で判断されるべきである。体感されるスピードは、出力ではなく、運営の設計から生まれる。

◈50年前のあの道のように

50年前の京釜高速道路は、単に舗装されたアスファルトではなかった。その上を走るトラックと乗用車、サービスエリアと整備所、交通放送と事故対応チームが存在したからこそ、真の「国家の動脈」となれた。

今日、私たちが設計すべきAI高速道路も同様である。GPUとケーブルだけでは十分ではない。データの流れを調整し、モデルの進化を管理し、コミュニティの声を反映する運営体制——これが、高速道路の上にあるエコシステムである。

AI高速道路の成功は、アスファルトの厚さではなく、その上を流れる交通の設計で決まる。統合された管制センターという強力なガバナンスの下、透明なダッシュボードと明確なKPIを共有し、コミュニティが共に道を整備するとき、初めてこの高速道路は、韓国の次の50年を運ぶことができる。

私たちは、もう問いを変えるべきである。「誰がこの道を走るのか?」から、「誰がこの道を共に作り、守るのか?」へ。

その答えは、政府でも、企業でも、開発者でもない。私たちすべてである。彼らが走れるように道を開いたのなら、今度は、その道が自ら呼吸し、成長するようにすべきである。

♣大統領府AI首席顧問へ再び提案する。

AI高速道路の運営とエコシステムを国家戦略として格上げし、すべての省庁と民間、学界が協力して管制センターの設計に着手していただきたい。

50年前、セメントで道をつなぎ合ったように、今や、データとモデルとフィードバックで、新たなエコシステムをつなぎ合わせる時である。そのエコシステムの上に、韓国の次の世代が繁栄する。

そうしてこそ、韓国のAI高速道路は、単なる追随の道ではなく、世界が注目する先導の道となる。

 

【編集者注】著者パク・ジャソン氏は、米国カリフォルニア大学サンディエゴ校を卒業後、カリフォルニア州の高校教員を経て、イリノイ大学カウンセラーを務めた。現在、イースタン・イリノイ大学、サウスウエスト・ミネソタ・ステート大学、ドイツ・ヨーロッパ大学の入学審査委員会委員を務めている。また、YouTubeおよびTikTokチャンネル「Jason Tube」を運営しており、オサン大学専任講師として在職中である。

기자명 Jason Park essaykingi@gmail.com